イーズ・ホームエデュケーション・ネットワーク

ブログ『誤解だらけの不登校対応』

ひきこもり生活と睡眠

「しんどい考えから逃れるために」

すでに世の中には不登校やひきこもりに関する多くの「考え方のコツ」なるものがたくさん出回っています。玉石混交ですが、数十年前に比べて、こうしたアドバイスは溢れかえっています。なのに、しんどい人が減っている印象はありません。

所属先を持たない在宅中心の不登校やひきこもり状態の人は、組織や他者の都合に合わせて生活する時間が短いため、やたら「考える時間」があります。すると、自分の置かれている現状や、今後のことについて考え始めてしまうという人が多いでしょう。考えたくないのに「自動思考」のスイッチが入ってしまうことも多々あることでしょう。

「わが身とそれを取り巻く世界について考える時間」の多くが「悲観を含んだ辛い時間」であるとき、人はそれを回避するため「夢想・妄想」に置き換えたり、ゲームやSNSや動画視聴などに没頭することで悲観に対抗します。安易にゲーム等を取り上げようとしている人は、年間数千時間の悲観の世界に戻そうとしているのかもしれませんから、一度立ち止まって考えて欲しいと思います。

また、「日中の浅い眠りに逃げる」「深夜の高揚に救われる」というのは非常によく行われています。深夜になると前頭前皮質の活動が弱くなると言われています。「ちょっと気分が良くなる」わけです。だとすれば、昼夜逆転にも意味はあるわけです。

「夢想・妄想に浸る」「ゲーム等に没頭する」「日中の浅い眠りい逃げる」「深夜の高揚に救われる」といった行動は、非常に選ばれやすいと思います。「リストカット」や「オーバードーズ」もこれらの仲間です。理性的なアドバイスより支持されているケースは多いと思います。



「からだからだ」

さて、不登校やひきこもりは社会的な問題であると同時に個人の問題です。「圧倒的に社会の問題であって個人の問題ではない」と言う人は、こう考えてもらいたいと思います。「社会的不利益を被っている人が個人の問題に直面せずに生きられるのか」と。

私の職業的経験から申し上げますと、在宅型不登校やひきこもりで「しんどさ」を抱える当人には「読んでわかる」程度の大衆心理学的アドバイスの多くはあまり有効ではありません。「長続きしない」と言いますか。ダイエット本のようなものです(もし心理学に頼りたいときは、専門のカウンセラーに継続的に頼るべきです)。

なぜなら、それらの多くが「理性による発想の転換」を求めているからです。精神的にゆとりのない人は、理性的な行動はとりにくいものです。そもそもアドバイスに手を出しません。それよりも「勝手に浮かんでくる悲観や不安から逃れたい」というせっぱつまった事情のほうに関心があるでしょう。つまり、「発想の転換の手前」こそ重要なわけです。考えるより前にするべきことがあります。それは何か。「からだ」です。

脳も言わずと知れたからだの一部です。脳のコンディションを改善する最大のものは何か。「睡眠」です。この睡眠が、「若いのに運動量が極端に少ない」「外出しないので長期間日光を浴びずビタミンDが欠乏しやすい」「日中の浅い眠りに逃げる」「深夜の高揚に救われる」「長時間発光画面を見続ける」「睡眠サイクルが乱れる」などの影響を受けています。

皮肉なことに、とりあえずの回避行動が、精神的ストレスの最大の解消機能を阻害してしまうのです。イーズでは、睡眠の質に問題がありそうな場合は、睡眠習慣の改善の継続的なサポートをします。今まで数百件のサポートをしてきましたが、睡眠の質が改善すると、「ちょっと気分は良くなる」ことが多いのです。

そこで思い出していただきたい。「理性による転換が難しい人」のことです。「彼らには、生活習慣の改善など、余計に難しいのでは?」という疑問が浮かんで当然です。まさに、そこです。それまで無かった新たな行動パターンの変更には、「『さあ、始めてみよう』という新規の行動への遷移しやすさ」と「だんだん抵抗感なく継続していける慣れ」が必要です。とくにダイエットと同じで、継続のためのマメなサポートが有効です。

学校生活でもそうですが、「生活リズム」だの「生活習慣」などという言葉は多くの若者にとって「無味乾燥ワード」です。魅力ないにもほどがあるのです。これを、「かろうじてゲームや推し活で精神をつないでいる人」にいきなり求めても、「いいですね」とはなりません。

だから、「信用」が大切なのです。信用を得るには一般的に「話を丁寧に聴く」などが必須とされていますが、私の場合は親の信用を借りたうえでの「プレゼン方式」です。
「あなたには、このような困りごとはないでしょうか」
「現在、このように対処されていて、それは当人なりには理にかなったことで周囲に理解は得られずとも一定の効果はあることでしょう」
「しかし、当面は良くても、ずっとそのままは希望していないのでは?」
「あまり負荷がかからず、ちょっと手出しする程度のことはいかが?」
といった感じです。

そして。私は「正しい生活」などのようなお勧めはしません。「こうあるべき」のように言いません。「ところで、気持ちよくなるいい薬みたいなもんがあるんですけどね」のような感じで、「質の高い睡眠」や「軽い運動」をお勧めします。
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