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ブログ『誤解だらけの不登校対応』

今の進路支援の問題点

不登校に関係なく、これまでの若者への進路支援とは、以下のようなことが中心であったと思います。

①高校への進学
②大学・短大・専門学校への進学
③就職(主に正社員)

この発想は、不登校の若者への進路支援も基本は変わりありません。全日制高校が少なく、定時制・通信制高校が多いのと、難関大学進学が少なく、専門学校が多めです。また、正社員になる人は一般平均を下回っています。


さて。こうした進路支援は、「手前の教育機関から次の教育機関にバトンタッチするまでの支援」という点で共通しています。中学の先生は高校進学の支援を熱心にやりますし、高校の先生は大学・短大・専門学校への進学を熱心にやりますし、大学・短大・専門学校のキャリアセンターは就職を支援します。つまり、「進学するまでの手続きを担当し、バトンタッチ後は関知しない」とも言えます。


「進学するまでの手続き」とは何か。代表的なのは「受験」です。受験指導は「本人の意向・希望をきく」「本人の学力や活動実績と希望校の選抜方式・倍率・校風・アドミッション等を勘案したマッチングの適否や合格可能性の提示」「受験勉強や推薦、併願校の組み方やスケジュール等についての助言」「受験に必要な書類の書き方や出願等の指導」「面接や小論文の指導」「受験に向けた体調やメンタルの維持管理の助言」などです。就活の際のキャリアセンターのサポートも本質的には同じです。


こうした進路支援は、在宅型不登校当事者への支援としては、非常に大きく欠落している部分があります。一口に言いますと「進学後のためのサポート」です。これが大いに不足しているか、まったくありません。


たとえば「生活習慣に関すること」です。「通信制高校の在宅コースを選択し、年数日間のスクーリングや最低限の行事以外は登校せず、レポートやメディア視聴記録等の課題提出に注力して卒業」という場合、卒業学年の時期に以下のような状態にあることが多いのです。

①「起 床」:起床時間がまちまちで、定時に起きることが難しい
②「身支度」:外出に向けた身支度にストレスを感じる
③「外 出」:外出することがあまりない
④「移 動」:単独で公共交通機関を使うことに強いストレスを感じる
⑤「外 食」:家の外で食事することに強いストレスを感じる
⑥「挨 拶」:ごく簡単なコミュニケーションに強いストレスを感じる
⑦「滞 在」:家の外で長時間滞在することに強いストレスを感じる」

もし、このような状態のままで大学等への進学を決めた場合、入学後は、①~⑦を実行するだけでヘトヘトでしょう。そのうえに、大学で講義を受け、課題をやり、ときにグループワークや発表や実習を行わねばならないのです。


通信制高校在宅コースの生徒や保護者が気にしやすいのは「レポートやメディア視聴等の提出状況」「テストの合否」「スクーリングに参加できるかどうか」など「単位・進級・卒業」に関することです。


進学に際しては「どの大学等・どの学部・どの学科がいいか」「オープンキャンパスや学校説明会に参加すること」「受験の手続きや選抜方法」「受験スケジュール」等を気にしやすいと思います。


つまり、気にするポイントが、「全日制高校に毎日通い、部活をやり、塾に通っている生徒」と基本的に同じなのです。


通信制高校が、今や実質的な「不登校経験者の受け皿」になっている昨今ですが、大学・短大・専門学校のほとんどはそうではありません。不登校であったことへの配慮は”ない”のです。今や学力試験なしで入学できる大学等はたくさんあります。受験勉強しなくても入学できる進学先はいくらでもあります。ですから「通信制高校入学→通信制高校卒業→大学等入学」までは、すんなりいったとしても、全日制高校に通い続けた生徒に比べれば、家の外で過ごす時間や他者との接点は「ほんの少し」です。


そのため、根本的な問題が噴出してくるのが「大学等への進学後」であったり、「就活」であったり、「就職後」になることがあるわけです。とくに「就職後」です。就職後まもなく退職し、ひきこもり状態に戻る人は、一般平均よりかなり高めだと思います。


教科学習や受験勉強よりも、卒業資格や入試といった「手続き」よりも、進学や就職を希望する人に対しては「家の外の社会生活に順応する準備(慣らし)」こそ重要な進路サポートだと考えます。


ただ、①から⑦の生活習慣の改善は、本人がしっかり目的を納得していないと、非常につまらない、意味を感じにくいものになります。だからこそ、その手前の信用関係が重要なのです。
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