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ブログ『誤解だらけの不登校対応』

「お金のこと」は今から考えるべき その2

最初は、「長期間働けなかった場合」から考えていきましょう。

「非正規労働者として働く」
「正社員として働く」
「自営業者として働く」
「障害年金(2級)」
「生活保護」
「親の遺産または贈与」

ひきこもり気味で無職の若者が、これらのいずれか、あるいは組み合わせで生活資金を得るとなりますと、親も子も「いやあ、どれもハードル高そうだなあ」と思うかもしれません。そう考えると、「親が養う」というのは、じつは非常に「現実的な選択」なわけです。「親がひきこもり気味の子どもを養っているのは、社会的に責められるようなことじゃない」と言いたいと思います。


「お金のことを早めに考える」としたら、いちばんはじめは、これです。「親が養うのは、案外ベターな選択だ」ということです。


一般的に「親がずっと子どもを養い続けるのはよくない」「子どもの独立の機会を奪っている」といった風潮があると思いますが、「もし親が20歳以後の子どもの扶養を一斉に拒否しはじめたら」と考えますと、生活保護費がどれほどになることか。


「8050問題」のことはご存じだと思います。私は個人的に、「8050」は親子を脅かし過ぎじゃないかと思ってるんです。それは「親が80歳になるまで子どもを養い続けてくれた」ということじゃないかと。脅かすと、焦って就労を強要しようとしたりするわけです。「不安で怖いものを脅かされて焦って強要する」というのは、そんなに効果的じゃないと考えるんです。


親が高齢になって養いきれず、ほとんど遺産もなく、本人がお金を稼げなければ、世帯を分け、生活保護申請に通じたケースワーカーに相談して申請することが多くなるでしょう。子どもが50歳から生活保護を受け、65歳から老齢国民年金を受け、公営住宅で家賃を免除されたと仮定しますと、生活保護の受給期間は15年です。では、同じことを20歳でしたら?生活保護費の支出は3倍です。


人は誰でも働き続けられるとは限りません。その中にはわかりにくい生きづらさ、障害を持っている人もいて、それが子どものうちに在宅型不登校として現れることもあります。全体から見れば少数ではありますが、不登校が増えている昨今、不登校が不就労に関する早めの表出サインとなっていた、ということがあります。


「8050問題」は、暗に「親が80歳になるまで50歳の子どもを養うこと」が前提となっています。「よくぞそこまで扶養をやってくださった」ではないでしょうか。これを避けるには、50歳まで待たないで、もっと若いうちからで世帯を分けて生活保護を申請すればいいわけです。


「お金のことを早くから考える」の2番目は「福祉に対する偏見や抵抗感を小さくする」です。

「生活保護は恥だ」「自分は障害『なんか』じゃない」といった偏見は根強いものです。しかし、それらを除外し、遺産も見込めないとしますと、親が亡くなったときに

「非正規労働者として働く」
「正社員として働く」
「自営業者として働く」

しか残りません。そもそも働くことに大きな抵抗感や恐怖心がある人は、思考が行き詰まるでしょう、だから「親が死んだら自分も死ぬ」などと開きなおるか、考えないように抑圧して日々を過ごすわけです。その長期に及ぶストレスは看過できないほど大きなものでしょう。これが「8050問題を問題にしている本質」です。

制度を利用するかしないかの問題は、現実的なお金の問題であって、「親が養えるうちは養って、それができなくなったら福祉制度を利用する」というシンプルな考えを持つべきだと思います。おそらく、そのほうが国民の負担は小さいはずです。
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