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ブログ『誤解だらけの不登校対応』

「サードプレイスが一番」という若者が増えている

「ファーストプレイス」は多くの人にとって家庭です。
「セカンドプレイス」は学校や職場。
そして「サードプレイス」はそれらではない居場所です。


昭和のモーレツ社員たちにとって、セカンドプレイスである職場は実際上、最優先の場でした。
家族に何か重要な問題があったりすれば家族が第一になりますが、
日頃は仕事が何より優先されていました。
「ふだんはセカンドプレイスが一番」だったのです。


学校や通所施設に行かない子にとって、セカンドプレイスは1番ではありません。
では家庭が一番なのか。
たしかに家族に何か重要な問題があったりすれば家族が第一になりますが、
おそらく、日頃は「趣味・娯楽」が重要になっていることでしょう。
つまり「サードプレイスが一番」です。


たとえば、オンラインゲームに没頭している子にとって、
日頃はオンラインゲームが家族や学校よりも重要な場です。
コスプレイベントや「推し活」などと同様です。


親世代は「自分たちも若い頃はそうだった。わかる」と思うでしょう。
しかし、そこに誤解があると思うのです。
今や、セカンドプレイスの重要性は、親世代よりも大きく減退し、
サードプレイスの重要性が顕著に増大しています。


その証拠に、30年前よりも、不登校というのは大きな問題ではなくなっています。
職業に夢見る若者も以前よりは減っており、
働きながらも「精神を支えているのは推し活。働くのは推し活のため」という
若者が増えています。


「昔もそういう若者はいた。若者とはそういうものだ」という理解が、
かえって時代の変化を分かりにくくしているかもしれません。
若者の学校や職場に対する価値は、総体的に低下しているように思います。


少し前まで、ゲームや逃避の手段でした。
しかし、今はとくにオンラインゲームが「Web上のサードプレイス」に相当しています。
親からすると「大事な学校や職場もなく、これからどうやって自立して家庭の外で生きていくのか」
となるわけですが、
じつは、その子の興味関心からすると、家庭にいても家庭は第一の居場所ではなく、
学校に行かず職場がなくても、サードプレイスという一番重要な場はある、わけです。


経済的には完全に親に依拠し、リアルな人間関係に乏しく、見た目は自立からほど遠くても、
じつは内面では家族関係や学校・職場関係がなくとも快適に交流できる場はある程度持っている、
そんな若者が増えています。


インターネットは、ついに第三の居場所として機能しています。
AIが加わり、さらに家庭の価値や学校・職場の居場所としての価値は低下していき、
代わりに趣味を超えたレベルで推し活やSNS、オンラインゲームなどの
第三の居場所の重要性が増していくでしょう。


「うちの子は学校にも通えず、通所施設にも通えない」
「うちの子は学習もせず、アルバイトもしない」
「うちの子は日がな一日パソコンやスマホに向かっている」
「うちの子には人間関係が乏しく、外の世界に出ていくことができない」

こうした見方が、すでに実際の当人の感覚とズレており、
年々そのズレ幅が大きくなっているように思います。


もはや親たちの多くが、子どもにとって「(日常においては)重要度の低い存在」になりつつあり、
学校も仕事も魅力を感じにくくなっていて、
サードプレイスにどっぷりはまっていたとして、それが「ごく普通」になりつつあります。


そうなってくると、そのハマり方をコントロールすることは困難を極めるでしょう。
「その事実を受け止めつつ」
これが標準になると考えます。


「いずれ友達をつくって」「いずれ恋をして」「いずれ結婚して」「いずれ子を産んで」
といった「かつての幸福像」といったものは、人によっては魅力のないものになっています。
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