「そのままでいいんだよ」の誤解
「君はそのままでいいんだよ」
「ありのままの君でいいんだ」
といった声かけがあります。
「これ言ってれば間違いなし」のような言葉ですが、私はそうは思いません。
そもそも「そのまま」とか「ありのまま」って何でしょうか?
たとえば「今はひきこもっていたいけど、一生は嫌だ」と思っている子どもに
「ずっとひきこもっていていいんだよ」
というのはどうなんでしょう。
「いつかこんなふうになりたい」その子が思っているのに、
「いや、君はありのままでいいんだ」というのもどうなんでしょう。
そもそも、人間は複数の考えや欲求を抱くことができるので、実際相反するような考えや欲望を保持しているとき、「そのまま」とか「ありのまま」がそれらのうちの一部だけのことだとしたら、「そのまま」でもなければ、「ありのまま」でもないんです。
「ほんとうは働きたくないけど、働けるようになりたい」
だとすると、「ずっと働かなくていいんだよ」は、「そのまま」「ありのまま」の一部だけです。
「ほんとうは働きたくないけど、働けるようになる君でいいんだよ」
は「そのまま」「ありのまま」ですが、何か変です。
「ほんとうは働きたいけど、働けない」に対して、
「ほんとうは働きたいけど、働けない君でいいんだよ」も何か変です。
そもそも、何が「いい」のかは本人が決めることです。
安易に良いことを言ってやろうとしても、
「わかってないなあ、この親は」と思われるかもしれません。