「学歴社会」の誤解
少し前まで、日本は「学歴社会」でした。でも、今は違います。「え?まだ学歴差別は残っているはずだ!」とおっしゃる人もいると思いますが、まず「学歴社会」は「学校歴社会」になりました。昔は学歴と言いますと「中卒・高卒・大卒」のことを言いました。その差が学力差を表すと考えられていたからです。
しかし、大学進学率が上昇し、少子化や総合型選抜方式によっては学力試験なしで入学可能な大学が増加した現在、大学卒だからといって高学力とは言えなくなりました。有名ではない大学卒よりも、開成高校や灘高を卒業して就職した生徒のほうが高学力と評価されるのではないでしょうか。
したがって、今は単なる大卒への評価は下がり、高難易度の大学への評価に絞られる社会となりました。それが「学校歴社会」です。ですが、それだけではありません。現在は「学校歴社会+コミュニケーション力社会」なのです。
「東大を出ていたって、コミュニケーション力に問題があるんじゃ・・・」このような話を聞いたことがあるのではないでしょうか。学校歴が高いことだけでは高い評価を受けることができません。現在は学校歴にコミュニケーション力が加わって、ようやく高い評価を得られる社会なのです。
さて。不登校には「学歴を得にくい」という不利な点がありました。しかし、私立や株式会社立の通信制高校や高認のおかげで、不登校を経験した生徒も多くが高卒資格(高卒程度資格)を得られるようになりました。さらに、総合型選抜を利用して大学や専門学校に進学する人も昔に比べると増えました。学歴という点では以前ほどの不利はありません。学校歴という点でも、徐々に難関大学を目指す人が増えてきたようです。
たとえば通信制高校最大手のN高等学校の進学実績を見ますと、大学進学率は30%程度と一般の全日制高校に比べて低めですが、難関大学の合格実績を加味すれば、偏差値50~55程度の全日制高校レベルです。加えて系列のZEN大学が開学したため、大学進学率も上昇することが予想されます。
不登校でさえ、学歴・学校歴問題は、全対傾向として、以前ほど大きな問題ではなくなりつつあると言えるでしょう。より大きな問題は「コミュニケーション力」のほうです。