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ブログ『誤解だらけの不登校対応』

「マイペース(own pace)」の誤解


 なんとなく「それそれのペースでいいんだよ」って言っていれば親切な良い人、というイメージがあるんですが、実際はどうでしょうか。


 たとえば、コンビニ店の冷蔵庫にドリンクを補充する時間が小規模補充で15分以内と想定されているとき、毎回45分かかってもいいでしょうか。あるいは「作業自体は15分で終わるが、やる気が出るまで毎回30分かかる」でいいでしょうか。「マイペースでいい」の言葉を信じて社会に出た若者は、「マイペースでいられないじゃないか」と思うのではないでしょうか。


 私がとくに感じてきたことは、「スピードは遅くても精神的なエネルギー消費がハイペースな人が多い」ということです。同じ空間で同じことをするのに、平均的な人の何倍も早く精神的に疲労するのです。一般的にマイペースで良いという表現をするときは「ゆっくりでいいよ」というニュアンスだと思います。しかし、作業自体がゆっくりだとしても、どんどん精神的なエネルギーを消費していってしまったら、それはゆっくりと言えるような状態ではありません。ハイペースです。


 「あまりにも丁寧で完璧主義すぎるために、早々に疲れ果ててしまう人」がいたとしますと、その人のマイペースを表面的に受け容れ続けるということは、その疲れやすさを温存することと同義になってしまうかもしれません。「ペース配分をうまくコントロールできるように応援すること」のほうが大事ではないでしょうか。


 サポート側が、サポートされる人の燃費の悪さに気が付かず「ゆっくりでいいよ」「焦らず」「自分のペースでね」などと親切に声をかけていても、本人は遅いことを気にして、焦って、悔しい思いをしているかもしれません。やたら優しくされるのも自尊心が傷つくでしょう。


 「この段取りで」「作業準備を先に」「ここは手を抜いて」「この道具を使うと楽だ」「ここだけは気を付けて」「最初にざっとやって、後からチェックする」「迷ったらこの人を呼ぶ」「何回か練習しよう」といった、「丁寧すぎや完璧主義によらない具体的な進め方」を身に着けられるように応援したほうが、ご本人は納得しやすいのではないでしょうか。

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