本当に怖いのは「再不適応」
一般的に「進路」と聞くと、「進学」や「就労」が浮かぶと思います。
しかし、「ひきこもり型不登校」に関しては、進路でいきなり進学・就労を意識するのはお勧めしません。「進路の取り組みが、新たな不適応を起こし、挫折経験となる可能性があるから」です。
そもそも、不登校をし、フリースクールなどの通所型施設に通わずにいるのは「社交的場面の回避行動をとっているから」です。そこをいきなり「進学・就労」で対応しようとすれば、自ずと「過敏さや回避傾向を温存する前提の進路選択」とならざるを得ません。
具体的に言いますと、高校なら「他人と接する機会が少ない集中スクーリング方式の通信制高校在宅ネットコース」を選びやすく、アルバイトでは「他人とコミュニケーションする機会が少ない年賀状の仕分けやポスティングや倉庫のピッキング等」を選びやすいでしょう。
大学に進学する場合でも、通学を避けようと通信制大学を選んだものの、通信制大学が通信制高校と違って「まったく不登校の受け皿ではなかったこと」に気が付いて退学する人がいます。
通学制の大学に入学しても、サークルや部活動には参加せず、もっぱら受け身で講義を受け、ひとりで食事をしながら過ごそうとしやすいでしょう。その結果、大きなギャップに出遭うのが「就活」、そして「就職後」です。
当事者親子としては、「通信制高校」→「大学・専門学校」→「アルバイト」→「就活」→「就職」の流れの中で、徐々に社会生活に慣れ、社会的経済的に自立することを期待することでしょう。
しかし、こうした進路計画に共通するのは、「ハードルの低い進学先・就労先を選ぶこと」と「社会生活の慣れがぶっつけ本番であること」です。「過敏さや回避傾向を温存したまま」「一般的なハードルとしては低いものの本人的には大きなチャレンジをし」「リアルな進学・就労先で適応をすべく努力する」という点が共通しています。つまり、適応チャレンジが「基本的にアウトソーシング(外注)」の形になっています。
このような進路計画は、当然、何割かが成功します。成功するので、チャレンジする人は後を絶ちません。そして、何割かが失敗します。「再不適応」です。
ひきこもり型不登校→通信制高校卒業→大学等に進学→アルバイト経験→就活→卒業→正社員として就職。けれども、温存し続けた「一般の人にはどうということもないストレスが過大に感じてしまう傾向」や「苦手を極端に回避しようとする傾向」が、再び不適応を起こし転職先を決めずに退職する、という形で現れることがあるのです。
いまどきは、通信制高校卒業や大学入学はそんなに難しいことではありません。私たちのサポートでは簡単な部類です。大事なのは「温存している過敏さや、極端な回避行動を緩和できるかどうか」です。
そう考えると、不登校やひきこもり行動というものは、非常に重要な情報を発しているわけです。その情報から何をくみ取り、どう対応するかで、再不適応を予防しやすくなるでしょう。