「とりあえず高卒」の危うさ
いまどきは、ほとんど中学校に出席していなくても通信制高校に入学できます。在宅コースなら学費も安いし、年間数日のスクーリングに出席するだけで良いので、多くのひきこもり型不登校の生徒が進学しています。通信制高校に在籍していれば(高校の)不登校になりません。不登校問題としては、形の上で解決です。
通信制高校入学後、「いかに単位をとるか」に注力する親子は多いと感じています。私たちの高校コースは、課題や単位のことばかり頑張りそうな場合、他の高校を選択することをお勧めしています。受けてもたぶん不合格です。
たとえば「最低限を」「ギリギリで」「義務感で」「仕方なく」「嫌々」取り組む人がいたとします。これを別の視点で考えて欲しいのです。その子に対して他の人が「最低限を・ギリギリで・義務感で・仕方なく・嫌々」対応してもかまわないでしょうか?
「お客さん」や「福祉的な対応」であれば話は違ってきますが、一般的な社会人としては、容赦ない対応が待っているかもしれないと考えるのです。「あなたがそうしたようにしているだけ」という結果が待っているかもしれないわけです。
実際、「過剰な人見知り」や「強い回避傾向」を温存したまま、「中卒は嫌だから」「とりあえず所属があったほうがいい」といった消極的動機で3~5年を過ごすと、卒業後に温存したものが表面に出てくることが珍しくないのです。
よくある出来事としては2つ。ひとつは「進学をあきらめて、とりあえずアルバイト志望という形で在宅中心の生活に戻る」。ひとつは「進学後に辛くなって休学・退学し、在宅中心の生活に戻る」です。
いまどきは、高校進学をサポートしたからといって「不登校問題を解決に導いた」などとは言えません。
イーズの高校コースを含め、通信制高校の大半は全日制や定時制に比べて格段に入学・卒業しやすくなっています。もし、「過剰な人見知り」や「極端な回避傾向」がありながら通信制高校に進学する場合は、「卒業資格取得」を主とせず、「せっかく単位がとりやすく時間にゆとりが持てることを利用して、過剰な人見知りや極端な回避傾向の緩和に時間を使う」ということを検討してもらいたいと考えています。
過剰な人見知りや極端な回避傾向は、生来のもので緩和できないということもあり得ます。しかしながら、私たちの経験ではその多くは後天的な影響によるものであり、経験によって緩和されることも多いのです。
不登校経験者が当面の劣等コンプレックス回避のために「とりあえず高卒」とばかりに通信制高校を選択し、ひたすら課題をやって単位をとることに注力しようとしているとき、私たちは「高卒後まで見据えたとき、ほんとうにそれでいいんですか?」といったん立ち止まって考えることをお勧めします。