就学・就労が再不適応につながることがある
不登校の子どもの将来を案じるのは親として当然です。なんとか自立をサポートしたい、そう考えて「ハードルの低い通信制高校等への進学」や「勤務日や勤務時間が短く、コミュニケーション場面の少ない就労」のようなところに行かせようとするご家庭はとても多いと感じます。
実際、「学校復帰」「進学」「就職」をもって「成功」と考える支援も数多く存在しています。しかし、「再不登校・不適応」というものがあるのです。内閣府の調査によれば(KHJ・NPO法人全国ひきこもり家族会連合会HPを参照)、15~39歳で62.5%、40~69歳では90.3%が就労を経験していました。つまり、「いったん就労しても再びひきこもること」は珍しいことではないわけです。
むしろ、考えるべきは「その進学・その就労がひきこもりの原因」かもしれない、ということです。これからは、全員がもれなく就労することが適切であるという考え方から、脱却する必要があるでしょう。中には、福祉制度を利用したほうがいい人もいます。福祉制度を利用することで、かえって自立できた、ということがあります。もっと言えば、福祉制度の利用すらしないほうがいい場合すらあります。
福祉制度を利用せずに経済的自立を目指す場合でも、「まず就労を想定する」「そのために就労に向けた訓練や体験をする」という発想を、そろそろ改めてはどうかと思います。「その前に、その人は自分自身や他者を信用できているのか」というところを考えたほうが、かえってその人の進学・就労に対する心理的ハードルを下げ、再不登校・再不適応を減少させるのではないかと考えます。
自他への不信を温存させたまま外形的な条件のハードルを下げることで心理的ハードルも下げて訓練・体験を重ねて就労を実現させるところから、自他への不信を緩和して心理的ハードルを下げることを優先することに移行するという提案です。
「直接就労を狙うより、自他への信用が上がった方が結果的にいい」のではないでしょうか。