「共感」の誤解
不登校・ひきこもりに関する書籍を読んでいると、しばしば「共感しましょう」というメッセージに出会います。実際、共感をもって子どもに接しようとしている大人は多いでしょう。その恩恵を受けた人もたくさんいるでしょう。しかし、共感は、しようと思って必ずできるほど簡単なものではありません。
「共感(エンパシー)」とは「本来は自分のものではない、他人の感情によって生じる代理的な感情体験」(心理用語集「サイコタム」より)です。感情体験ですから、他人の感情に近い感情が自らに湧き起らなくてはなりません。そうなると、「共感しやすい感情体験」と「共感しにくい感情体験」が出てくるはずなのです。
「とにかく子どもの言っていることを否定せず、全てを肯定的に受け止め、感情を共有しているかのように振る舞う」ということをやってしまっている人は多いと思います。しかし、わが子を思うあまり、無理して「共感したふり」をしてしまうと、観察力の鋭い子どもは、「ウソ臭さ」を感じて不信感を抱くかもしれません。
共感は、しようと思って確実にできるほど簡単なものでなく、形ばかり演じればむしろ危険です。